「今年入社した新卒生はどうですか?」という質問をたびたび耳にする。
「コロナの影響で研修があまりできず、現場に出るのも遅かったので心配」
「ミーティングや会合が制限されているから、新卒生が自社のルールや文化を理解しているか不安」
「このような大変な状況のなかで、よく頑張っている」など、
各企業、各店舗、各人によって反応はさまざまだ。
今年は新型コロナウィルスという未だかつて誰も経験したことのない事態となった。
どれだけ長年成長を遂げてきた会社でも、どれだけ優秀な社長や幹部でも、
困難な状況で日々対応している。そのような中で、今年社会に初めて出た新卒生たちを
安易に良し悪しで判断するのはあまりに酷であるし、彼ら彼女らに多く責任を
求めてはいけないだろう。会社側がみるべき点は、新卒生の良し悪しでなく、
自社の教育の良し悪しであると思う。
・そもそも体系だった教育制度がない
・教育にコストを割いていない
・教育に責任やスキルを持つものがいない
・おこなっている教育が古い
・教育をアウトソーシングする文化がない(自社教育で完結させようとする)
・目標や目的がなく、教育をすることで満足している
新卒生を含めた若手社員の成長は、自社の教育によって左右することを念頭におき、
上記のような点がみられないか今一度、チェックしてほしい。
因みに、私が最近クライアントから最も相談される項目は
「自社のおこなっている教育が古い。変えたい」という声である。
2020.11.09の日経ビジネスの特集で「コロナ後の新人 職場の希望かお荷物か」
では、このようなことが書かれていた。
「新入社員を迎え入れる上で新人教育は不可欠。ただし現在実施されている
指導法のすべてが新人の育成や団結力の向上に強く結びついているとは言い切れない」
(日経ビジネス2020.11.09 No.2065 P37 参照)
私もまさにその通りだと感じている。
美容師は良くも悪くも職人気質な側面がある。
(1)見て覚えよ
(2)現場で学べ
(3)時間をかけろ
という文化はまだまだある。悪いとは必ずしも言えないものの、
このような考えだけで教育を完結させるのは、軽率に感じる。
美容業界に関わらず、どのような業界でも少子高齢化の影響を受け人材不足は深刻。
今は「早期育成」「1人あたりの生産性向上」が各社必須になってくる。
そのような中で、
(1)見て覚えよ
→ 教育を受ける側が学習の意図や目的を理解できなければ、学習の効率・成果は落ちる可能性がある
(2)現場で学べ
→OJTのみであると体系的な知識を吸収する場がないため、間違った知識を身につけたり、誤った理解をする可能性がある。OFF-JTも必要である。
(3)時間をかけろ
→時間をかければかけるほど、組織や個人の生産性は下がる。また、時間をかけることで本人の目標設定はし辛くなり、モチベーションも落ち、離職に繋がる可能性がある。
特に、(1)については問題がある。
「どんな形式の新人教育であっても、大前提として『なぜ今、それを学ぶ必要があるのか』を
指導を受ける側が明確に理解していなければ、高い育成効果は望めない」
「新人たちに学ぶ意味を理解してもらうには、何より教える側が、なぜ今それをする
必要があるのか理解していなければならない。その意味で例えば『作業の意味や目的を
伝えないOJT』などは業務スキルの向上への効果が望めない典型的な新人育成法
と言っていい。」
(日経ビジネス2020.11.09 No.2065 P37 参照)
ドキッとした方もいるかもしれない。
つまり、「見て覚えよ」は業務スキルの向上が望めない可能性があるということである。
「最近の若者は『何故これを今やるのですか?』とよく聞いてくる」という話を
耳にするが、その質問事態は、私は悪いことではないと思っている。
問題は、“何故これを今やるのか”を本人が頭を使って探さないこと、そして、
教育者が明確に意図を伝えられないことである。
特に教育者が言葉で意図を説明できないカリキュラム項目や指導内容があるのなら、
それは変更する必要があるし、意味付けを考える必要があるだろう。
もちろん、(1)(2)(3)とも良い側面もある。
(1)見て覚えよ
→ 教育を受ける側が答えを自ら考えるクセがつく
(2)現場で学べ
→ 現場でしか学べない生きた知識と技術がみにつく
(3)時間をかけろ
→ 忍耐力がつく
特に(2)は、現場での学習は柔軟性や対応力が身につくだけでなく、
“どんなに頑張っても問題が起きてしまう不条理さ”を知る機会を得ることができる。
これは大変貴重なことである。机の上での勉強や、ウィッグでの練習に不条理は
生まれない。しかし、現場では、いつ、どこで、どのような事態がうまれてもおかしくはない。
今回の“コロナ”も然りである。新卒生の臨機応変な対応力も、サロンの売上に大きく関わるだろう。
自社のどのような点において教育の見直しや改善が必要なのか。
今一度、新卒生の1人ひとりのようすや彼ら彼女らの声をよく聴くとよいであろう。
各サロンにいる若手社員の早期育成、生産性向上を願っている。
2020年12月7日