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【第11回 コラム】 “育つ”人材をつくるために

 

現在、私どもが取り組んでいる事業のひとつに、美容専門学校に

「産学連携・早期育成プログラム」を普及する活動がある。

具体的には、学校とサロンが協力関係になるために、

私どもが間に入って授業やインターンシップの企画・運営・管理をおこなっている。

学生が社会人として必要な能力やサロンワークに必要なスキルを美容師から

直接学ぶことで、少しでも早期育成、即戦力につながることを意図している。

  

今となっては学校教育にジョブ型、いわゆる働くためのスキルアップに着目した

教育体系が浸透しつつあるが、一般化しているかといわれると、それはほど遠い。

学校がカリキュラムを改変するために大変労力と時間がかかるし、もちろん

予算もかかる。各種の承認を得るためにネゴシエーションも必要であろう。

  

これは美容専門学校にも当てはまる部分がある。実際、私どもも何年もかけて

先に話した産学連携の教育を各美容学校に提案し、やっとほんの少しずつ理解を

いただけるようになってきた段階である。現在、導入いただいている学校や

協力していただいているサロン、関係者の方々は大変柔軟な考えを持っていて、

感謝の言葉しか見つからない。

  

教育を変えるのは大変地道であるし、まだまだ日本の教育は、改善する余地が多分にある。

  

先日の日経ビジネスLIVE対談、人材の育成・活用をテーマに討論した日本電産の

永守会長(永守学園理事長)と、MS&ADの柄澤会長の会話の中で、永守会長は

このようなことを口にしていた。

  

「アメリカなんかに行きますと新卒者が入ってきたら、即戦力になる。

例えばモーターの技術者というのは即モーターの設計ができるとかね。

私は現代の日本の大学教育は間違っていると考えています。教育の「教」は

やったけど、「育」、すなわち育てることはできていない。

何かを教えているらしいんですけれども、人間を育てるものになっていないんですよ。」

(日経ビジネス2020.12.21 No.2071 P52 参照)

  

また、柄澤会長はこのようなことを口にしている。

 

人材を今度どう生かすかは、企業がどういうパーパス(目的)を持って

どう進んでいくのか。そのときにどういう人材を使っていくのか。

これが明確でなければ、せっかく育てた人材が企業に入った途端腐ってしまう。

(日経ビジネス2020.12.21 No.2071 P52 参照)

 

2人の会話には美容業界にもつうじる、大変勉強になるキーワードがある。

 

1つめの永守氏の、【教えているけど、育てるものになっていない】

 

たしかに、教えていても育つかどうかは別問題である。たくさんの教科書を渡して、

黒板の前で1時間2時間座らせても、すぐに寝てしまったら元も子もない

(私はよく寝る子だったが)。これは美容教育に関しても同じことがいえる。

いくら会社がアカデミーとウィッグと講師を用意して何時間カットさせても、

投資に見合った成長が見込めるかは本人次第である。

 

私は人が育つためには3つの環境が必要だと思っている。それは、

  

(1)主体性を尊重する環境

(2)思考をうながす環境      

(3)努力をたたえる環境

 

(1)の主体性を尊重することで、行動力が身につく。自ら行動をすることによって

様々な問題や壁にぶつかる。そのときに、(2)の思考をうながすことで、

自らで問題解決する力を学んでいく。最後に、(3)そういった一連の頑張りを

褒めることで、本人が次の行動にうつしていく。これが私の考える成長循環である。

  

環境次第で勝手にぐんぐん育つ人もいる。だが、環境を用意しなければ勝手に

ぐんぐんは育たない。水と土と太陽の3つがそろって、はじめて樹木も自ら育つのである。

自社は人が育つ環境かどうか、新入社員が入社する前にぜひ今一度チェックしていただきたい。

 

そして2つめの柄澤氏の 、

【企業がどういう目的をもって進み、どういう人材を使うか。明確でなければ人材は腐る】

 

これも美容業界に当てはまる部分がある。採用難といえども、新卒採用や追加募集に

伴う中途採用に関しては、行き当たりばったりでなく自社の目的に応じた雇や、

人員配置が重要である。

 

・なぜあなたなのか

・なぜこの場所か

・なぜこの時期か

・なぜあの人と一緒なのか

・なぜこの雇用形態なのか ・なぜこの給与なのか etc

 

これらが明確に伝えられるとよいであろう。特に美容室における人員配置と役割決定に

関しては「なんで私がこの店舗なんだろう」「なんでこの役割をいま私がやるんだろう」と

不満や不信を抱いて離職するケースは少なくない。すべてに意図があることを本人に

理解してもらう必要がある。それこそ「単に穴を埋めるため」であったら、

その人はアイデンティティを失い腐ってしまう可能性が高い。

 

適切な場所に植え、状況に応じて移しかえたり、支柱を立てたりすることで、

樹木もすくすく育つものである。上記も参考にしていただければ幸いである。

 

2020年、大変な時代であったと思う。

変化に対応するためには自ら考え行動し、成長していかなければならない。

そして会社は、人が育つ組織でないと発展していかないだろう。

 

2021年、どうか皆さんにとって素晴らしい1年になりますように。

 

来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

 

 

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