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【第4回 コラム】 美容師の副業、サロンの副業許可を考える

 

新型コロナウィルスの影響による業績悪化や対応策に関するニュースが連日取り上げられている。

 

「ANAが従業員の副業範囲を広げ、勤務時間以外に

ほかの会社とも雇用契約を結べるようにする方針を固めた」

(2020/10/10 9:57 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64862040Q0A011C2NNE000/)

 

このニュースの背景にはANAは業績低迷に伴い年収ベースで約3割減の

給与カットを提案しており、今回副業の拡大で社員の理解を求めるだけでなく、

各従業員のスキルを自社にいかしてもらうという狙いがあるようだ。

まさに社員を守るため、会社を守るための策である。

 

ANAの副業拡大を各メディアは大きく取り上げているが、

そもそもコロナ渦の前から副業許可や緩和の声は、どの業界からも

聞こえてきていた。今はコロナの影響でさらに副業が加速している。

 

そもそも終身雇用、定年退職という概念が日本ですでになくなってきているなか、

これからはいかに企業に依存せず、個人のブランディングを高め、

お金を稼いでいけるかが重要であり、

その手段として「副業」というキーワードがあがってきたのだろう。

書店によっては、副業に関するコーナーも用意されているほどだ。

 

副業をする理由でいうと主なところだろう。

 

・生活していけないから

・会社をやめたいから

・スキルやキャリアをアップしたいから

・人間関係をつくるため、保つため(仕事関係、友人関係、恋人関係etc)

 

では美容業界の副業にフォーカスすると、10年、20年前から美容師が

“暗黙”にツージョブ、スリージョブをする実態があった。

 

「たまたま入ったお店でウチのアシスタントが働いていてびっくりした」

という話を私も何度か聞いたことがある。

 

主にこういった副業をしているのはアシスタントやデビューしたての

スタイリストである(らしい)が、これは「生活していけないから」という理由が大きいであろう。

 

2016年と少し前だが、このような記載を見つけた。

 

リクエストQJナビ DAILY 2016.02.29 意外とみんなやっている!?

美容師の副業事情 (https://www.qjnavi.jp/special/money/sideline/

 

 

『なぜ美容師が副業を考えるのか? 1つにはやはりお給料の少なさ。…(一部省略

もう1つの理由は「美容師としてのスキルアップをしたい」というもの。…』

 

 

記事の中ではじめに出てきた“お給料の少なさ”が理由で副業をする人は

少なくなっているように感じる。企業努力によりどんどん基本給が改善されており、

今やアシスタントの月給は全国平均でも18万円を超えている。

 

都内では新卒生の初任給が19万円や20万円のサロンもある。

そのため「給与が少ないから夜のお店で副業をする」という美容師は

以前よりも少なくなっているように感じる。

 

この記事が出てから4年間で、業界の働き方が改善されているのは非常に喜ばしいことである。

 

一方で後述の“美容師としてのスキルアップをしたい”理由で副業をする人が

増えているかと聞かれたら、それは疑問である。業界の給料水準が上がった分だけ

「副業するほどのスキルアップを考えていない」

「サロン内で十分スキルは身につけられる」と考える人が増えたように感じられる。

 

全国各地の美容学校生に話を聞いても就職先には、

「早く帰れる」

「会社が安定している」

「営業中に練習できる」

を求める声ばかりである。

 

中には「スタイリストにデビューしなくてもよい」という学生もいる。

 

おそらくサロンで新卒採用を担当する方はこういった話を必ず一度は

聴いたことがあるだろうし、学生の希望に応えようとしているだろう。

 

しかし、コロナの影響で「お給料が少ないから副業する」

「スキルアップしたいから副業する」と考える美容師は以前のように増えてくるかもしれない。

 

私の知るAサロンでは、アシスタントがメイクの手直しサービスを提供している。

オーナーに話を聞くと、

「アシスタントがやりたいと言ったから始めた。

アシスタントの給与が少しでもアップして、生活に余裕を持ってほしいと思っている」という。

 

メイク手直しの売上はそのスタッフの給与に反映されているという。

 

サロンにとって、副業の許可はリスクが伴う。副業が本業になり、

結果としてそのスタッフが離職してしまったら死活問題であるから。

 

慎重な判断が必要だろう。

 

しかしAサロンのような、いわゆる“社内副業”の形式であれば、

少しリスクは減るかもしれない。

スタッフの生活のため、キャリアアップのため、スキルアップのため、

どのようなかたちで副業・副収入を許可するか、サロン側は検討していくべき事項である。

 

美容師は、自分自身が広告塔になることも、営業マンになることもできる。

髪を切りながらお客様に食品や、服や、家や、保険や、健康や安心、

その他多くの商品やサービスを提案・提供することだってできる。

サロンも美容師個人も、更に価値を高められるし、さらに豊かになるはずである。

 

今回の記事を読んで、副業を含めた「働き方」について、

今一度サロンが、美容師が、考えるきっかけになれば嬉しい。

 

 

 

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